最終更新日:2026年8月10日
「今年は通院費もかかったし、ドラッグストアで市販薬もたくさん買った。両方まとめて申告すれば控除額も増えるはず」——そう考えている方は、注意が必要です。
結論からお伝えすると、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。国税庁の情報によると、どちらか一方を選んで確定申告することになっており、一度選択すると後から変更することもできません。
この記事では、FP2級の運営者が、両制度が併用できない理由と、どちらを選ぶと有利になるかの考え方を、国税庁の情報をもとに解説します。
この記事で分かること
- 医療費控除とセルフメディケーション税制が併用できない理由
- それぞれの控除額の計算方法
- どちらを選ぶと有利になるかの分岐点
- セルフメディケーション税制を利用するための条件
- 申告時に注意しておきたい点
併用できない理由(国税庁の明記事項)
国税庁「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」によると、セルフメディケーション税制は通常の医療費控除の「特例」という位置づけです。そのため、次のルールが定められています。
- セルフメディケーション税制の適用を選択した場合、通常の医療費控除は受けられない
- 通常の医療費控除を選択した場合、セルフメディケーション税制は受けられない
- セルフメディケーション税制を選択した場合、対象の市販薬以外の医療費が通常の医療費控除の下限額(10万円など)を超えていても、通常の医療費控除をあわせて受けることはできない
- 一度確定申告書を提出した後、更正の請求や修正申告によって、どちらか一方から他方へ適用を変更することはできない
つまり、「市販薬はセルフメディケーション税制、通院費は医療費控除」というように、費目ごとに使い分けることはできない仕組みです。
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それぞれの控除額の計算方法
| 制度 | 控除額の計算式 | 上限額 |
|---|---|---|
| 通常の医療費控除 | (支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円(総所得金額等200万円未満の場合は総所得金額等の5%) | 200万円 |
| セルフメディケーション税制 | (対象の市販薬購入費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-12,000円 | 88,000円 |
国税庁の情報によると、上記のとおり、通常の医療費控除は「支払った医療費全体」を対象とするのに対し、セルフメディケーション税制は「対象の市販薬(特定一般用医薬品等)の購入費」のみが対象です。対象となる市販薬には、パッケージや領収書に識別マークや対象商品である旨の表示があります。
計算例:どちらを選ぶと有利になるか
年間の総所得金額等が200万円以上の方(下限額10万円が適用されるケース)を例に、金額別の目安を確認します。
ケース1:市販薬の購入費のみで、通院費がほとんどない場合
- 市販薬(対象品目)の購入費:年間5万円
- 通常の医療費控除:5万円-10万円=0円(下限に届かず控除なし)
- セルフメディケーション税制:5万円-12,000円=38,000円の控除
- →この場合はセルフメディケーション税制を選ぶ方が有利です
ケース2:通院費・入院費が多く、市販薬の購入費も一定額ある場合
- 通院費・入院費など:年間20万円/市販薬(対象品目):年間3万円
- 通常の医療費控除(医療費全体で計算):(20万円+3万円)-10万円=13万円の控除
- セルフメディケーション税制(市販薬のみで計算):3万円-12,000円=18,000円の控除
- →この場合は通常の医療費控除を選ぶ方が有利です
このように、通院費など医療費全体の金額が大きい方は通常の医療費控除、市販薬の購入費が中心で通常の医療費控除の下限額(10万円など)に届かない方はセルフメディケーション税制、という傾向になりやすいことが、上記の計算式から分かります。ご自身の実際の金額に当てはめて、どちらの控除額が大きくなるかを事前に計算しておくことをおすすめします。
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セルフメディケーション税制を利用するための条件
国税庁「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)」によると、セルフメディケーション税制の適用を受けるには、市販薬の購入費だけでなく、次の「一定の取組」を行っていることが要件とされています。
- 健康保険組合等が実施する健康診査(人間ドック、各種健診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンなど)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
- 特定健康診査(メタボ健診)、特定保健指導
- 市区町村が実施するがん検診
これらのいずれかを行っていない場合は、市販薬の購入費がいくらあっても、セルフメディケーション税制の控除は受けられません。なお、人間ドックなどの取組自体にかかった費用は、セルフメディケーション税制の控除額の計算には含まれません。
実際に確認・申告する手順
- 1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費・市販薬購入費の領収書を集計する
- 通常の医療費控除とセルフメディケーション税制、それぞれで控除額を試算する
- 控除額が大きい方を選び、確定申告書に必要な明細書(医療費控除の明細書、またはセルフメディケーション税制の明細書)を添付する
- セルフメディケーション税制を選ぶ場合は、健康診査や予防接種などの「一定の取組」を行ったことを証明する書類も準備する
- 所轄の税務署へ提出する
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FP視点の実務上の注意点:申告前に必ず両方を試算する
FP2級の運営者として特にお伝えしたいのが、「申告する前に、両方の制度で控除額を計算して比較する」という点です。
- 国税庁の情報にあるとおり、一度どちらかを選んで申告すると、後から他方に変更することはできません。感覚で選ばず、実際の金額で比較することが大切です
- 家族の医療費・市販薬購入費も合算できるため、生計を一にする家族全員分の領収書をまとめてから計算すると、より正確な比較ができます
- 市販薬がセルフメディケーション税制の対象かどうかは、購入時の領収書やパッケージの識別マークで確認できます。「対象と思っていたら対象外だった」ということがないよう、購入時にレシートを確認しておくと安心です
注意点
- この記事の内容は2026年8月10日時点で確認できた国税庁の情報に基づいています
- セルフメディケーション税制は令和8年(2026年)12月31日までの時限的な制度として国税庁に明記されています。2027年以降の取り扱いは、国税庁の最新情報でご確認ください
- 控除額の試算は目安であり、実際の所得税額への影響は、所得税率など個々の状況によって異なります
- 正確な申告方法・要件については、国税庁の確定申告書等作成コーナーまたは所轄の税務署にご確認ください
よくある質問
Q1. 医療費控除とセルフメディケーション税制、両方を確定申告書に記載してもいいですか?
いいえ、両方を併せて適用することはできません。国税庁の情報によると、どちらか一方を選択して申告する必要があります。
Q2. セルフメディケーション税制を選んだ後、やっぱり医療費控除にしたいと思ったら変更できますか?
できません。国税庁の情報によると、一度確定申告書を提出した後は、更正の請求や修正申告によって、セルフメディケーション税制から通常の医療費控除へ、またはその逆へ変更することはできないとされています。
Q3. どちらを選べばいいか分からない場合はどうすればいいですか?
1年間の医療費全体の合計額と、対象となる市販薬の購入費の合計額をそれぞれ集計し、この記事の計算式に当てはめて控除額を比較することをおすすめします。控除額が大きい方を選ぶのが基本的な考え方です。
Q4. セルフメディケーション税制の対象となる市販薬かどうかはどこで確認できますか?
購入時の領収書にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されています。一部の対象医薬品は、パッケージに共通識別マークが掲載されています。
Q5. 市販薬を買っただけで、健康診断などを受けていない場合はセルフメディケーション税制を使えますか?
使えません。国税庁の情報によると、セルフメディケーション税制の適用には、健康診査や予防接種など「一定の取組」を行っていることが要件とされています。
まとめ
- 医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、どちらか一方を選択する
- 一度選択すると、確定申告後に他方へ変更することはできない
- 通院費など医療費全体が多い方は医療費控除、市販薬中心で医療費控除の下限額に届かない方はセルフメディケーション税制が有利になりやすい
- セルフメディケーション税制の利用には、市販薬の購入に加えて健康診査等の「一定の取組」が必要
どちらの制度も「知らずに使わなかった」ことが一番の機会損失です。まずは1年間の領収書を集めて、両方の控除額を計算してみることから始めてみてください。
参考情報・専門機関への確認案内
- 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm
- 国税庁「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1131.htm
制度の内容は2026年8月10日時点で確認できた情報に基づいています。最終的な判断の際は、国税庁の確定申告書等作成コーナーまたは所轄の税務署にご確認ください。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に代わるものではありません。実際の控除額・適用可否は、個々の所得状況や医療費の内容によって異なります。


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