退職金とiDeCo・企業型DCはどの順番で受け取ると損する?2026年1月からの重複調整ルールをFPが解説

資産運用




最終更新日:2026年8月22日

「iDeCoの一時金を先に受け取って、5年空けてから会社の退職金をもらえば、どちらも退職所得控除を満額使える」——これまでよく語られてきた考え方です。

結論からお伝えすると、2026年(令和8年)1月1日以後に支払を受けたDC一時金については、この「5年」が「10年」に延びています。国税庁の情報によると、退職金を受け取る年の前年以前9年内にDC一時金を受け取っている場合、退職所得控除の計算で勤続期間の重複が調整されます。

この記事では、FP2級の運営者が、受け取る順番と間隔で税額がどう変わるのかを、国税庁の情報をもとに計算例つきで整理します。

この記事で分かること

  • iDeCo・企業型DCの一時金が税金の上でどう扱われるか
  • 「退職所得控除の重複調整」とは何か
  • 2026年1月から何が変わり、誰に適用されるのか
  • 受け取り順3パターンごとの調整期間の違い
  • 調整の有無で税額がいくら変わるか(計算例)

前提:DC一時金も「退職所得」として扱われる

まず押さえておきたいのは、iDeCoや企業型DCを一時金で受け取った場合、それが会社の退職金と同じ「退職所得」として扱われるという点です。

国税庁の情報によると、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金は、退職所得とみなされます。

退職所得の計算式は次のとおりです。

(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
20年超 800万円 + 70万円 ×(A - 20年)

DC一時金の場合は、この「勤続年数」にあたる部分として確定拠出年金の加入者期間等が使われます。会社での勤続期間と、DCの加入者期間は、多くの場合同じ時期に重なっています。この重なりをどう扱うかが、この記事の本題です。

退職所得控除の「重複調整」とは

会社の勤続38年とDCの加入15年が丸ごと重なっていた場合、両方でそれぞれ満額の控除を使えると、同じ期間について二重に控除を受けることになります。

そこで国税庁の情報では、一定期間内に前の退職手当等を受け取っている場合、本年分の退職所得控除額から、重複期間分の控除額相当額を差し引くという調整が定められています。

ポイントは、この調整の対象になる「前の退職手当等」の範囲が、受け取り方によって変わることです。

2026年1月から変わった点

国税庁のタックスアンサーNo.2732によると、調整対象となる「前の退職手当等」は次のように整理されています。

状況 調整対象となる前の退職手当等
原則 前年以前4年内に支払を受けた退職手当等
前年以前9年内に、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金(2026年1月1日以後に支払を受けたものに限る)の支払を受けた場合 2026年1月1日以後に支払を受けた退職手当等で前年以前9年内のもの/2026年1月1日前に支払を受けた退職手当等で前年以前4年内のもの
前年以前19年内に退職手当等の支払を受け、本年中にDC一時金の支払を受ける場合 前年以前19年内に支払を受けた退職手当等

ここで見落としやすいのが、9年内という扱いの対象が「2026年1月1日以後に支払を受けたDC一時金」に限られている点です。

つまり、2025年12月31日までにDC一時金を受け取り済みの人は、従来どおり「前年以前4年内」の扱いになります。いつ受け取ったかによって適用されるルールが違うため、自分がどちらに当たるかを先に確認してください。

受け取り順3パターンの整理

受け取り方 調整を避けるために必要な間隔 実際に選べるか
DC一時金が先 → 会社の退職金が後
(2026年1月1日以後にDC一時金を受給)
前年以前9年内に該当しないこと 原則60歳以降にDCを受け取り、その後10年後に退職するケースは限られる
DC一時金が先 → 会社の退職金が後
(2025年12月31日までにDC一時金を受給済み)
前年以前4年内に該当しないこと 従来どおりの扱い
会社の退職金が先 → DC一時金が後 前年以前19年内に該当しないこと 60歳退職で75歳までにDCを受け取る場合、20年空けるのは困難

なお、同じ年に両方を受け取る場合は、合算した金額をもとに退職所得を計算します。この場合も勤続期間の重複は排除されます。

調整の有無で税額はいくら変わるか(計算例)

次の前提で試算した目安です。実際は勤続年数の端数、DCの加入者期間、他の退職手当等の有無などの条件により異なります。

前提:22歳入社・65歳退職(勤続43年)、会社の退職金3,000万円。iDeCoの加入者期間15年、一時金600万円を60歳で受給。DCの加入期間は勤務期間とすべて重なっているものとします。

まずDC一時金の側は、退職所得控除額が40万円×15年=600万円となり、退職所得の金額は0円です。

問題は、その5年後に受け取る会社の退職金です。

項目 重複調整なし
(従来の5年ルールが使えた場合)
重複調整あり
(2026年1月1日以後にDC一時金を受給)
勤続年数に基づく退職所得控除額 2,410万円 2,410万円
重複期間15年分の控除額相当額 △600万円
退職所得控除額 2,410万円 1,810万円
退職所得の金額 295万円 595万円
所得税+復興特別所得税 201,647円 778,512円
住民税(市町村民税6%+道府県民税4%) 295,000円 595,000円
税額の合計 496,647円 1,373,512円

差は約88万円です。退職金の額が大きく、DCの加入期間が長いほど、この差は広がります。

なお、退職金の額が退職所得控除額の範囲に収まる人は、調整が入っても税額が0円のまま変わらないこともあります。全員が損をするわけではありません。まずは自分の勤続年数から退職所得控除額を計算し、退職金の見込額と比べてみてください。

前の退職手当等が少額だった場合の扱い

ここは見落とされがちな点です。国税庁の情報によると、前の退職手当等の収入金額が、その勤続年数をもとに計算した退職所得控除額に満たない場合、前の退職手当等の勤続期間は次の算式で計算した年数分だけあったものとして重複期間を計算します。

前の退職手当等の収入金額 算式
800万円以下の場合 収入金額 ÷ 40万円
800万円を超える場合 (収入金額 - 800万円)÷ 70万円 + 20

たとえば加入者期間15年でDC一時金が400万円だった場合、400万円÷40万円=10年となり、重複期間は15年ではなく10年分で計算されます(1未満の端数は切り捨て)。DC一時金が少額なら、調整による目減りもその分小さくなります。

まず確認する3つのこと

1. DC一時金をいつ受け取ったか(または受け取る予定か)

2025年12月31日までか、2026年1月1日以後かで適用されるルールが変わります。すでに受け取っている人は「退職所得の源泉徴収票」で支払日を確認してください。

2. 確定拠出年金の加入者期間

企業型DCとiDeCoの両方に加入していた期間、他の制度から資産を移換した期間の扱いなど、記録は運営管理機関で確認できます。

3. 会社の退職金の見込額と勤続年数

勤続年数から退職所得控除額を計算し、退職金の見込額がその範囲に収まるかどうかを先に確かめます。収まるなら、調整が入っても税額に影響しない可能性があります。

受け取る書類の側の手続きも忘れないでください。退職金の「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなる?20.42%源泉徴収と取り戻し方をFPが解説で、提出先と期限を整理しています。

受け取り時期の設計を相談したい場合

前提として、ここまでの計算は自分でもできます。退職所得控除額の算式は国税庁のページに公開されていますし、DCの加入者期間は運営管理機関の記録で確認できます。個別の税額の判断は、所轄税務署または税理士が正式な相談先です。

そのうえで、DCを一時金で受け取るか年金で受け取るか、公的年金の受給開始をいつにするか、退職後の生活費をどこから取り崩すかといった全体設計は、税金だけでは決まりません。こうした点をまとめて整理したい場合は、FPへの無料相談という方法があります。

向いている人:退職金とDCの両方があり、受け取り方の組み合わせを家計全体の中で考えたい人。
利用前の注意点:相談は無料でも、相談員が特定の金融商品を扱っている場合があります。その場で契約せず、提案内容を持ち帰って比較してください。税額の個別判断は税務署・税理士の領域です。

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注意点・例外

  • DCの受給時期には制度上の制限がある:老齢給付金は原則60歳以降に請求します。通算加入者等期間によって受給を開始できる年齢が異なるため、詳細は運営管理機関またはiDeCoの案内でご確認ください。税金の都合だけで自由に時期を選べるわけではありません。
  • 年金で受け取る場合は扱いが違う:DCを年金形式で受け取る場合は退職所得ではなく雑所得として公的年金等控除の対象になります。本記事は一時金で受け取る場合の説明です。
  • 住民税の税率は変わらない:退職所得に対する住民税は、退職所得の金額に市町村民税6%・道府県民税4%を適用して計算します。重複調整は退職所得控除額の側に効くため、住民税額も連動して変わります。
  • 2026年1月から源泉徴収票の提出範囲が広がった:国税庁の情報によると、2026年1月1日以後に支払うべき退職手当等については、すべての受給者について退職所得の源泉徴収票等を提出することとされています。過去のDC一時金の記載漏れは把握されやすくなっています。
  • 申告書への記載漏れに注意:「退職所得の受給に関する申告書」には、その年に受け取った他の退職手当等を記載する欄があります。DC一時金を受け取っている場合は必ず記載してください。

制度は改正されることがあります。この記事は2026年8月22日時点で国税庁などの公式ページを確認して書いていますが、実際に受け取る時点で最新情報をご確認ください。

よくある質問

Q1. iDeCoの一時金を先に受け取れば、退職金の控除は満額使えますか?

受け取った時期によります。国税庁の情報によると、2026年1月1日以後に支払を受けたDC一時金については、退職金を受け取る年の前年以前9年内であれば重複調整の対象になります。2025年12月31日までに受け取ったものは前年以前4年内が基準です。

Q2. 会社の退職金を先に受け取り、後からDC一時金を受け取る場合はどうなりますか?

本年中にDC一時金の支払を受ける場合、前年以前19年内に支払を受けた退職手当等が調整の対象になります。60歳前後で退職金を受け取ってから20年空けるのは実際には難しいため、調整が入る前提で考えたほうが現実的です。

Q3. 重複調整が入ると、どれくらい税金が増えますか?

重複期間の年数に応じた退職所得控除額が差し引かれるため、その分だけ課税対象が増えます。増える額は退職金の額、勤続年数、DCの加入者期間によって大きく異なります。退職金が退職所得控除額の範囲に収まる場合は、税額が変わらないこともあります。

Q4. DC一時金が少額でも、加入者期間の分だけ控除が減りますか?

いいえ。国税庁の情報によると、前の退職手当等の収入金額がその退職所得控除額に満たない場合は、収入金額を800万円以下なら40万円で割るなどの算式で計算した年数分の期間があったものとして重複期間を計算します。少額なら調整による目減りも小さくなります。

Q5. 自分がどちらのルールに当たるか分からない場合はどうすればよいですか?

まず「退職所得の源泉徴収票」でDC一時金の支払日を確認してください。そのうえで判断がつかない場合は、所轄税務署または税理士にご確認ください。DCの加入者期間は運営管理機関の記録で確認できます。

まとめ

  • iDeCo・企業型DCの一時金は退職所得として扱われ、会社の退職金と勤続期間が重なる部分は控除が調整される
  • 2026年1月1日以後に支払を受けたDC一時金は「前年以前9年内」が調整の基準になる
  • 2025年12月31日までに受け取ったDC一時金は従来どおり「前年以前4年内」が基準
  • 退職金が先でDC一時金が後の場合は「前年以前19年内」で、実質的に調整を避けにくい
  • 退職金が退職所得控除額の範囲に収まる人は、調整が入っても税額が変わらないこともある

「先に受け取れば得」という単純な話ではなくなりました。まずは自分の勤続年数とDCの加入者期間、そして支払日を確認するところから始めてください。

受け取り方を含めた退職後の設計を相談したい方へ

繰り返しになりますが、控除額の計算は公開されている算式で自分でもできます。そのうえで、一時金と年金の組み合わせ、公的年金の受給開始時期まで含めた設計を第三者に整理してもらいたい場合は、FPの無料相談という選択肢があります。提案されたものをその場で契約せず、必ず持ち帰って比較してください。

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参考情報・専門機関への確認案内

制度の内容は2026年8月22日時点で確認できた情報に基づいています。最終的な判断の際は、所轄税務署・勤務先・確定拠出年金の運営管理機関にご確認ください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に代わるものではありません。実際の税額・控除額は、勤続年数、確定拠出年金の加入者期間、他の退職手当等の有無など、個々の状況によって異なります。

参考情報
参考情報:
本記事は、金融・保険・税金・不動産・資産運用・家計管理に関する一般的な情報として、金融庁、国税庁、厚生労働省、消費者庁、国土交通省、各自治体・公的機関、各金融機関・公式サイトの情報を参考に作成しています。
制度改正、税制改正、商品内容、金利、手数料、条件などは変更される場合があります。最終的な判断は、必ず公式情報を確認し、必要に応じて税理士、弁護士、ファイナンシャルプランナー、金融機関、不動産会社などの専門家へご相談ください。
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